台湾大学修士三年第一学期の成績(107-1)

今学期でついに修士論文を除いて、卒業単位が揃いました。今学期は確率論Iとベトナム語I(上)を履修しました。両科目ともA+の成績で通過していました。これで台湾大学に来て履修した全科目においてA+(GPA4.3)の成績を修めることができました。とりあえず今回は今学期について振り返りたいと思います。

確率論I / 機率論I

確率論Iは「測度論の復習」、「大数の法則」、「中心極限定理」、「マルチンゲール」の4つが主な内容でした。用いた教科書はRick. DurrettのProbability : Theory and Examples (ver5)です。

まずは高速に測度論・ルベーグ積分の復習を行ったあと、大数の法則へと入っていきました。大数の法則では、大数の弱法則(WLLN)、大数の強法則(SLLN)、Kroneckerの補題を用いた別証明、KolmogorovのMaximal Inequality、Two-series theorem、Three-series theoremなどを学びました。

次に中間試験後は中心極限定理へと入っていきました。Skorokhod’s representation theorem, Helly’s selection theorem, Prokhorov’s theorem, Slutzky’s theorem, Inversion Formula, Levy’s continuity theorem, Lindeberg-Feller’s theoremなどを学びました。そしてマルチンゲールの章ではRadon-Nikodymの微分に基づいて条件付き期待値を定式化した後、Martingale convergence theorem, Doob’s inequality, Lp-maximal inequality, Lp-convergence theorem, 条件付き期待値に関するDominated convergence theoremなどを学びました。

量は相当多くキャッチアップが大変でしたが、統計専攻の私にとっても、厳密な数学に基づいて構築された確率理論を学ぶ事ができて、有意義かつ充実していたと思います。

また中間試験は102/110と好成績で、担当教師から「君は統計専攻なのに解析がも出来て偉い」と褒められた事が自信になりました。履修者には数学研究所(解析専攻)の博士課程の学生などもいましたが、たぶん私の成績が一番良かったと思います。期末試験も同じぐらいのよく出来たと思いますが、試験が返されず、得点も公開されなかったので、成績は謎のままです。ですが総合成績は無事にA+がつけられたので良かったです。

学期が始まる夏休みのうちに中国の北京大学から出版されている「測度論・概率論基礎」(程士宏)という簡体中国語の測度論的確率論の教科書を読んでいたことが非常に役に立ったと思います。本書は大部分が測度論の復習(特に確率論に必要な測度論)に割かれていますが、うまくまとまっていると思いました。この本で先に測度論の復習を行ったことが、後々の学習に役立ったと思います。

ベトナム語I(上) / 越南文I(上)

確率論Iだけでは力を持て余すかもしれないと思って、今学期は、ベトナム語の授業も履修することにしました。実はベトナム語に興味を持って、昨年、政治大学の公企中心で一般向けに開講されているベトナム語の入門クラスに参加していました。それで今学期は自分の大学でもベトナム語を履修してみようと思ったのです。

ベトナム語は現在は漢字を用いておらず、アルファベット(+α)や声調記号を用いて書き表すので、文字を覚えるのに苦労はしないと思います。次に中国語の声調は1~4声+軽声(ただし台湾ではあまり「軽声」は聞かれない)のに対して、ベトナム語は6つの声調があります。(中国語では平聲、重聲、銳聲、問聲、玄聲、跌聲と呼ばれる) おそらく声調は2文字以上の組み合わせのリズムに慣れれば多分そこまで難しくはないと思っています。ですが特に複合母音などは、中国語よりも豊富な種類の発音があるように思っていて難しいと感じています。 また中国語とは語彙や文法が似ているので、中国語母語者はベトナム語の習得がしやすいかもしれません。 語順が中国語と逆になる部分もありますが、 中国語を勉強したことがある私も「中国語の単語をそのまま対応するベトナム語に置き換えれば十分意味が通じるのではないか」という気がしています。ただ今後、学習を進めていくにつれて、「中国語ではこう表現したほうが自然だが、ベトナム語ではこう表現した方が自然」といった例にたくさん出くわすかもしれません。

中間試験は先生との1対1の面接による発音試験で、椅子に座って机に置かれた紙に書かれたベトナム語の単語や文章を読むあげるというものでした。幸い試験前に自分なりに一生懸命練習したおかげで、担当のベトナム人の先生からも「発音がとても綺麗です。しかもこんなに速く読み終えたのはあなたが初めてです。」と褒められました。また期末試験は筆記試験だったので、教科書の単語や文章を暗記しておいたので簡単でした。来学期もベトナム語I(下)を履修するので、引き続き頑張ります。

台湾大学修士三年第一学期の成績(107-1)」への9件のフィードバック

  1. ブログみてたんですけど、コメントは初めてです。
    全科目A+なんてすごいですね! おめでとうございます! 僕も大学院行ったら良い成績取る目標立てたいです(さもなくば行き詰まりそう..)笑

  2. いつも拝見しております。juncheng様は日本でも修士課程を修了されたとのことですが、ご自身の経験と見聞を踏まえて、日本と台湾における理系修士課程の違いをブログ記事にしていただけないでしょうか? 日常生活(勉強・研究)、休暇の過ごし方、就職の準備などなんでも結構です。いち読者のリクエストとしてご検討いただけますと幸いです。

    1. コメントありがとうございます。また時間があるときにこのテーマで記事を書きます。よろしくお願いします。

  3. はじめまして

    統計学の勉強法、いつも参考にさせて頂いております。
    貴殿の生き方も含め、全てのお話が大変参考になります。

    先日訪れた医大の方が、「台湾は統計ソフトウェアが発達していなくて」と申しておりましたが、
    実際のところはいかがなものでしょう?SPSSやSASなど普及しているものでしょうか。もしも
    ご存じであれば、ご教授頂けますと幸いでございます。

    私は中国語はからきしですが、いつか台湾にて働いてみたいと本気で考えております。
    目指されるところは、台湾大学の研究者でしょうか?

    今後とも宜しくお願い致します。

    1. ありがたきお言葉を頂いて恐れ多いです!

      > 先日訪れた医大の方が、「台湾は統計ソフトウェアが発達していなくて」と申しておりましたが、
      > 実際のところはいかがなものでしょう?SPSSやSASなど普及しているものでしょうか。

      医学部の事はよく分からないのですが、台湾大学や他の大学でも、大学がSPSSやSASなどのライセンスを購入していたはずなので、学術機関などについて言えば統計ソフトが普及していないことはないかなあ?と思います。ただ病院等の機関ではどうなっているのかは分かりません。

      私の場合は、多変量解析の授業で少し実際にデータ解析をする宿題が出たことがあり、授業ではSASを使うことを推奨されていましたが、みんな無視してRなど別のソフトウェアを勝手に使っていました。私は情報系出身だったので、どちらかというとSASみたいなツールよりかは、matlabのようなプログラミング言語の方が直感的で使いやすいと感じたのでmatlabでデータ読み込んで処理をしていましたw

      > 私は中国語はからきしですが、いつか台湾にて働いてみたいと本気で考えております。
      > 目指されるところは、台湾大学の研究者でしょうか?

      私は台湾以外の国で博士号をとりたい(例えばドイツなど?)と最近考えています。ですが修士を卒業したら一旦台湾で統計・データ解析などの仕事に就こうかと考えています。コメントありがとうございます。お互いにがんばりましょう。

  4. ご無沙汰しておりますと申しますか、しすぎて申し訳ございません。
    新学期で進路はどうなされたでしょうか?まだご在住でしょうか?

    1. お気遣いありがとうございます。現在は台北市内の研究所でリサーチ・アシスタントをしていますが、来年は台湾大学の博士課程に行くかもしれません。

      1. ご返信ありがとうございます。
        台湾にて研究活動を続けられるのですね。

        先日、台湾を訪問させて頂きました。例によって医学部ばかりですが、大学によって研究に対する温度差があるのだなぁと感じましたです。
        一昔前の日本の臨床研究のごとく、「統計学は最後にデータを解析するだけの役割」という考え方が強烈な大学も、まだまだあるのだと思いました。
        もしもそちらで傍られるようになったら、統計学と共に「臨床研究のデザインの重要性」を語りたいところですが、いかんせん中国語学力に難アリで困っております。

        ご活躍を祈念いたします。また、質問などさせて頂けますと堪能でございます。

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