統計学検定1級に合格した勉強法

本文章は、統計検定の合格体験記として投稿させていただいたものですが、先日、統計検定の合格者の声に掲載されました。

追記:2018/08/01に追記しました。

2015年11月29日に統計検定1級を受験し、無事に合格出来たので、いままで自分が取り組んできてよかったと思う教材や勉強法を公開したいと思う。なお統計応用は理工学で受験をしてきた。また午前の統計数理はS評価で合格していた。

【きっかけ】

私の専門は情報工学で統計学と言えば学部・院時代に機械学習の科目があったが余り理解せずに卒業してしまった。統計検定は書店で偶然知ったが、学生時代に統計をしっかり勉強できなかったという後悔があったので勉強がてらに受験を決意した。勉強を始めたのは試験の9ヶ月程前で、当初は学生時代に僅かに勉強した事すら忘れていたが、短期間の勉強で幸い一発合格でき、また午前の試験では最優秀成績賞を頂けたので満足している。以下は具体的に自分の行った勉強法。

【具体的な勉強法】

(初期)まず[1]→[2]の例題・演習問題を全て解く所から始めた。基本的な問題ばかりだが、これら2冊をしっかり終えることで大抵の数式操作が自力で出来るようになった。

(中期)[3]は比較的本格的な入門書だと思う。条件付き分布、確率収束・法則収束、順序統計量、完備十分統計量、UMVUE、最強力検定、尤度比検定等の概念はこの本で初めて学んだ。[4]も同じ著者だが、[3]で分からない時に[4]を参照するとヒントが見つかる事もある。[4]はかなり詳しい部類なので長く辞書として活用できると思う。[3]の次は[5]に進んだが、線形モデル(回帰モデル・分散分析)の章だけを読んだ。[6]は半分くらいしか読めてないが洋書の定番の入門書らしい。1~8章は[3]と内容はかぶっており、9章以降は線形モデル、ノンパラメトリック検定、ベイズ推定等。EMアルゴリズム等も載っているので機械学習を勉強している人にも役立つかもしれない。余談だがネットで検索すれば詳しい解答資料が見つかる。

(後期)日本語ではないが演習書[8],[9]は実力養成に一番役立った。台湾の各大学院の統計学の院試問題と解答例が収録されている。(この2冊で大体の問題は解けるようになると思う) 条件付き分布、順序統計量、漸近分布、MLE、CRLB(クラメールラオの下限)、UMVUE、最強力検定、尤度比検定、ベイズ推定、回帰分析・分散分析、有名定理の証明等がよく出題されている。問題文の多くは英語なので中国語が読めなくても十分活用出来ると思う。(※「博客來」等から日本でも取り寄せ可能だと思う。なお[6]も繁体中国語版は「博客來」で入手可)

(その他)[7]はメインとして使っていないが、易しく丁寧に書かれている印象で偶に参照しているので挙げさせていただいた。

参考図書一覧

  • [1] 演習キャンパスゼミ統計学(マセマ)
  • [2] 明解演習・数理統計(小寺平治)
  • [3] 入門演習・数理統計(野田一雄,宮岡悦良)
  • [4] 数理統計学の基礎(野田一雄,宮岡悦良)
  • [5] 数理統計学・基礎からのデータ解析(鈴木武)
  • [6] Introduction to Mathematical Statistics (Robert V.Hogg)
  • [7] 現代数理統計学(竹村彰通)
  • [8] 名校專攻 統計學歷屆試題104-102年(郭明慶)
  • [9] 統計學102-97年歷屆試題詳解(郭明慶)

参考図書に関して追記(2017/2/13, 2018/08/01)

[6] Rovert V. HoggのIntroduction To Mathematical Statisticsは実は既に日本語されていることに最近気づきました。豊田秀樹氏の数理統計学ハンドブックです。ちなみに辞典のように分厚いです。お値段は2万円を超えますw 英語版であれば多分ネットでpdfが落ちてるはずなので、それを読めばいいかと思います。ただしバージョン更新につれて章立てが変わっているかもしれません。

[8], [9] 郭明慶氏の統計学演習問題集に関して、更に古いバージョン「96年度版」、「91-95年度版」なども存在しております。博客來讀冊などで購入可能かもしれません。

追記と更新(2017/2/13, 2018/08/01):

昨年、台湾大学の応用数学研究所の数理統計コースの修士課程に合格し、現在は大学院で統計専攻として勉強しております。さて、上で書いた統計検定1級の対策に用いた教材に加えて、新たに出会った教材なども紹介していきたいと思います。

回帰分析 回帰分析に関する本として授業で用いているのがWILEYのIntroduction to Linear Regression Analysis, 5th Edition ですが、私が日本語で読んでいた数理統計の教科書の線形モデルに関する解説よりもずっと詳しいです。ちょくちょくおかしいところ、解説が不親切なところもありますが全体的には収穫は大きいです。

数理統計学 高等統計推論という科目ではCasella and BergerのStatistical Inferenceという本が参考書に指定されていました。演習問題が豊富に収録されている点、ネット上で演習問題の解答も転がっているので(Casella and Berger solutionとかでググる)わりと良い教科書かもしれません。ただし上で挙げた台湾の院試演習をしっかりこなした人であればほとんどの問題は簡単に解けるかもしれません。また英語の数理統計の有名所では、他にもBickel and DoksumやShao Junの本などがあります。ちなみに私の大学院で受けた授業のノートなどはこちらで公開しております。

多変量解析 多変量解析の読みやすい本としてはJohnsonのApplied Multivariate Statistical Analysisがよいかと思います。ただし数学の証明などは端折られていたりすることもあります。少し古い本ですが、MardiaのMultivariate Analysisには数学的な証明などが詳しく載っているのでそちらも参照すればよいかと思います。また授業ではA First Course in Multivariate Analysis (Bernard Flury)を用いていたので、そちらもついでに挙げておきます。

統計学検定1級に合格した勉強法」への18件のフィードバック

  1. 非常に参考になる情報ありがとうございました。
    とくに、統計学専攻の大学院が多く院試の存在する国の、院試問題集を使うというのは目から鱗でした。
    そこでお聞きしたいのですが、台湾の他に、そういった問題集がある国はご存知でしょうか?
    統計検定の受験を予定しており、是非そういった国があれば参考にしたいと思っております。

    1. 匿名希望さん:

      メッセージありがとうございます。

      他の国ではそういう問題集があるのかどうかは私の方では分かりません。
      私の勝手なイメージですが、もしかすると欧米の方だと、大学院入試は、筆記試験ではなく、面接や書類で決まったりしそうなので、そういう問題集が出版されることは少ないのではないかと思っています。ただしWEBで無料で手に入るような教材・資料は英語圏では膨大にあるので、そういうものを検索して、自分の学習教材にするという手はよいかもしれません。(例えば probability and statistics exercises のようなキーワードで検索してみるなど。)

      また今、台湾大学の応用数学研究所に在籍しているのですが、統計の授業で Casella and Berger という英語の統計学の本が参考教材に指定されています。
      私も見てみましたが、中には演習問題が沢山あるので、それを解いてみるのも良い演習になるのではないでしょうか。

      ※Googleで 「Casella and Berger」 で検索すればpdfが手に入るようですが、著者が無料で公開しているのか、それともそうでないのかは私には判断がつかないので、ご自身の判断でご利用ください。またCasella and Berger solution 等で検索すれば、別冊解答も見つかるかと思います。

      それでは試験がんばってください。

  2. juncheng様

    早速のご回答ありがとうございます。
    Casella and Bergerは統計専攻の大学院のスタンダートな教科書だと聞いたことがありましたが(やはり台湾大学でも使われているのですね!)、中身を見たことがありませんでした。演習問題がたくさんあるとのことなので(難易度は高いかもしれませんが)そちらをあたってみたいと思います。(webでの検索も試みたいとおもいますが、なかなか大学院入試程度(学部卒程度)のエクササイズを見つけるのが難しそうです…)

    統計専攻でアジア圏に留学されるとは珍しい進路ですね(実際のところはよく存じ上げないのですが)。記事の更新等楽しみにさせて頂きます。

    1. 今更ですが返信ありがとうございます。

      > なかなか大学院入試程度(学部卒程度)のエクササイズを見つけるのが難しそうです…)
      台湾の院試問題集もかなりおすすめですので、Casella and Bergerが体に合わなければ、そちらの購入もご検討ください。

      > 統計専攻でアジア圏に留学されるとは珍しい進路ですね(実際のところはよく存じ上げないのですが)。
      そうですね、台湾大の数学研究科と応用数学研究科の院生の一覧の中に、日本人はおろか外国人(中華系以外)らしき名前は私一人だけでしたので、理系でアジア系は比較的少ないのだと思います。

  3. 昨年の記事ですが、質問させてください。
    演習書[8],[9]についての質問です。
    博客來、讀冊で探してみたのですが、どうやら品切れでした。そのため、代替可能な本だと思われる
    統計學歷屆試題詳解(105~103年)が1と2の二冊あり、二冊ともまだ在庫がありました。私は中国語に
    疎いので(英語ならばOK)、本の中身がわからないのですがこの本でも演習書[8],[9]の代わりになるでしょうか。
    また、他にも代わりにできる演習書や演習書[8],[9]がまだ購入できる方法があれば教えて下さい。
    お忙しいとは思いますが、ご返信いただければ幸いです。
    それでは、失礼します。

    1. 元イカ東さん
      [8] の方は http://www.sanmin.com.tw/Product/index/005252193 三民網路書店から注文し購入できないか一度チェックしてみてください。在庫ありになってるので今なら購入可能かもしれません。

      [9] と同様の本(少し年度が古いですが問題量は同じ)は在庫はないですが http://www.sanmin.com.tw/Product/Index/000360268 注文が入り次第入荷手続き可能なようですので、こちらも注文してみてもよいかもしれません。

      あと民国96年度版 http://www.sanmin.com.tw/Product/Index/000578231 こちらは1カ年の問題しか収まってない薄い本ですが、この年度は結構手強い問題が多かったので、こちらもよければ買ってみてください。

      > 統計學歷屆試題詳解(105~103年)が1と2の二冊あり
      私の記憶ではこちらは商学系や金融系等の学部の院試が収録されていたはずです。そちらも勿論よい演習になるかと思います。
      ただし一般的な数理統計の実力を養うなら、↑のほうがおすすめですね(応用数学科や統計学科の院試問題です)。
      ただ1冊ぐらいそちらの方も購入しておいても良いと思います。

      あとはCasella Bergerの Statistical Inference も有名な本なのですが、ネットでpdf及び演習問題の解答が落ちてますねw ちなみに↑の院試問題もちょくちょく Casella Bergerの本から出題されてたりします。前に匿名希望で私のブログにコメントしていた方にもCasella Bergerをオススメしました。その方も昨年の統計検定1級に合格されて、合格体験記を寄稿されてと思います。(もしかしたら人違いかもしれませんが。)

      ついでに回帰分析は Introduction to Linear Regression Analysis とかいう600ページぐらいの分厚い本があるのですが、
      それは結構読みやすくて、おすすめです。(中国の淘寶とかで安くで売られてましたかね)

      まあまたいつでもコメントくださいw

      1. 返信ありがとうございます。
        Statistical Inferenceは持っているので、そちらの演習問題で
        代用したいと思います。この度はありがとうございました。

  4. 今年に行われる統計検定1級合格を目指して勉強のために、
    現在Introduction to Mathematical statistics を読んでいるのですが、
    一級対策としてこの本の練習問題を解くのは非効率でしょうか?
    1級に合格するためなら演習キャンパスゼミ統計学(マセマ)などを解いたほうが良いのでしょうか?

    1. マセマの統計学の演習書はごく初歩的な内容のものですので、解いても一級に合格する実力には至らないと思います。
      レベルとしてはHogg や Casella and Bergerの数理統計の演習問題を解けることが望ましいと思います。
      非効率かどうかは分かりません。

      1. 返信ありがとうございます。
        こちらのお返事が遅れてしまい申し訳ありません。
        Hoggの練習問題を解いていきたいと思います。
        また、1級対策に関して多変量解析や時系列解析の参考書でおすすめのものをご存知でしたらお教えいただけないでしょうか?応用分野は社会科学を受けようと考えております。

        1. ちなみにHoggの練習問題の解答は多分ググれば出てくるかと思います。(最新版が私の見たことのあるバージョンと少しレイアウトが変わっていたので問題の番号なども変わっているかもしれません) 時系列解析は勉強したことがないですが、多変量解析についてはいくつかおすすめの参考書があります。

          まず数理統計学の本を読み終えたら回帰分析の本を読むのがよいと思います。おすすめはWileyのIntroduction to Linear Regression Analysisです。わりと優しく書かれているので読みやすいと思います。回帰分析の本を読めば、多変量正規分布に関する数理統計的な理論、パラメータに関する検定、モデリングetcなどの概念がわかってくるかと思います。

          次に多変量解析の本で読みやすくて分かりやすいのは、johnsonのapplied multivariate statistical analysisだと思います。ただし数学的な理論が少し省略されたりしている部分もちょくちょくあります。多変量正規分布、ウィシャート分布、Hotelling’s T2、Wilks Lambdaなどに関して細かい数学的な証明を追いたい場合は、古い本ですが、MardiaのMultivariate Analysisに詳しく書かれていますので、こちらも併せて読めばよいかもしれません。ただし統計検定1級でMANOVAが出題されたかどうか分からないので必要ないかもしれません。

          また私が授業で用いていたのは、A First Course in Multivariate Statistics – Bernard Fluryです。主成分分析など他書より数学的な性質が詳しく述べられている部分もあるという印象を持ちました。

          1. たくさんの参考図書を上げてくださり、ありがとうございます!
            詳しい解答付きなのはとても嬉しいですね。
            Introduction to Linear Regression Analysisはこのブログを読ませていただいたときに購入しましたので、
            applied multivariate statistical analysisとexercises and solutions in biostatistical theoryを取り寄せたいと思います。
            ありがとうございました!

          2. たぶんどちらもネットで上手に検索すればPDFが見つかるかと思います。(見つからなければコメントください)(本返信コメントはしばらくしたら消すかもしれません)

  5. そういえば exercises and solutions in biostatistical theory という本があるのですが、詳しい解答付きの数理統計の演習書で、量も多くないので統計検定の対策にも使えるかもしれません。

  6. 記事読ませていただきました!!
    直接連絡を取ることは可能でしょうか??
    クローズドな場でお聞きしたいことがありまして、、😭

  7. 記事を読ませていただきました!!
    コメント書かせていただいたはずなのですが、消えてしまっておりまして、
    もし二重コメントになっておられましたら申し訳ありません。

    可能でしたら直接やり取りしたいのですが可能でしょうか??
    クローズドな場でお聞きしたくて、、、

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